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福岡高等裁判所 昭和49年(ラ)103号 決定

抗告人 宮田修一

右代理人弁護士 鶴丸富男

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。

記録によれば、抗告人(原告)は、原裁判所において、被告棟近幹夫、同関和虎に対し、金七八二万三、〇一三円およびこれに対する昭和四一年七月一九日から右完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めたのに対し、原判決は、その主文第一項において、「被告らは原告に対し、各自金一三八万〇、七八六円およびこれに対する昭和四七年七月一九日以降右金完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。」と命じて、被告らに対する請求の一部をそれぞれ認容したが、その主文第二項には「被告関に対する請求および被告棟近に対するその余の請求はこれを棄却する。」とあり、また、その理由には、原告の被告棟近に対する本訴請求は、金一三八万〇、七八六円と、これに対する昭和四七年七月一九日以降右完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は理由があるからこれを認容するが、被告関に対する請求および被告棟近に対するその余の請求は失当であるからこれを棄却する旨の記載があり、主文と理由間にそごがあったこと、そのため、原裁判所は、昭和四九年一一月三〇日右理由に沿うごとく、職権で、主文第一項を「被告棟近は原告に対し、金一三八万〇、七八六円及びこれに対する昭和四七年七月一九日以降右金完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。」と更正する旨の決定をしたことが明らかである。

思うに、判決主文は、その理由と離れて存することはなく、理由は主文を導き出した経路を明らかにするものであって、裁判所が裁判の基礎として事件について表明した意見にほかならないから、その理由と相反するがごとき主文を生ぜしむべき道理はない。しかして、本件の場合、前記説示のごとく理由と相反する主文を生ずるに至ったのは全くの誤謬であって、その誤謬は明白であるから、判決確定の前後を問わず、主文と雖も、その他の部分と同じくこれが更正をなし得るものと解するのが相当である。

そうだとすると、判決主文第一項はこれを前記のごとく更正しうべきものといわねばならないから、原裁判所がこの部分を更正して判決理由と一致せしめたのは相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却すべきものとし、民訴法第四一四条、第三八四条、第八九条、第九五条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 原田一隆 裁判官 鍬守正一 松島茂敏)

〈以下省略〉

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